2017年9月

天災に思う

 



 今私の頭を大きく占めているのは、大分県に住む長男の難病仲間が土砂災害に遭ったこと。この頃は地球温暖化の影響か、各地で災害が起こり知り合いが巻き込まれていく。そして被災した知り合いは、電話がつながると必ず「うちは大丈夫!」と答える。周囲の悲惨な状況の中で、命が助かったためだろう。しかし生活の立て直しにも、心の回復にも、長い時間がかかるはずだ。今回九州で被災したお母さんのメールには、大丈夫が繰り返されていた。家族全員命は助かったけれど、家は土砂で住めなくなった。しかも全壊ではなく家として使えなくなるという、今回のような土砂災害に関しては、いまだに行政からの支援はほとんどないそうだ。
 「ナナの家」でも毎月地震か火災を想定した防災訓練を行っている。始めた頃は大変だった。出火場所を台所に設定した時、お絵かきをしていた自閉症の子どもが、元あった場所にクレヨンを戻さなければ避難しないと頑張った。それは出火場所のすぐ傍だった。何度も言い聞かせて理解してもらう必要があった。靴を履かない、玄関と違う掃き出し窓からは外に出られない…など、困難の山だった。こどもデイが今の所に移転した後も毎月訓練を重ね、やがて実際に地震が起きた時も、スムーズに避難できるようになった。しかし火事で炎に包まれた経験はなく、不安は残る。最近テレビで、煙を体験できるゴーグルに似たものが発明されたことを知った。ぜひ子どもたちにも体験させてみたい。
 私たちの責任は、子どもたちを保護者の手に無事返すところまで。そのためには、避難所に着いた後の過ごし方も大きな課題だ。ナナの家には知的障がい児が多いため、避難先の小学校の体育館で長時間過ごすのはむずかしい。インターネットで調べると、ゲームを持ち込むと有効、テントで個室を作るのが良いなど、知的障がい児に向けた提案が集まっていた。複数障がい児者のいるご家庭もあるため、そのご家族の迎えは遅くなるかもしれない。「ナナの家」の子どもたちの準備は、自分たちでしなければならないだろう。
 うちの息子は体温を調整する汗が出ないため、クーラーが必須だ。新潟地震を体験した同病者は余震が怖くて長く車で暮らしていた。そうなるとガソリンが必須になるが、災害時のガソリンスタンドの長蛇の列を思い出す…。とにかく、ガソリンは半分になったら即補充しよう。車を電動にしてオートキャンプ場に逃げると良いとアドバイスする人もいる。でも慣れた医療機関と離れるのは不安だ。先日のテレビで、来年から障がい者一人ひとりに避難場所を誘導する自治体のサービスが始まるというニュースが流れた。携帯電話のGPS機能を使うようだ。少しずつ災害対策も進化していくのだろう。
 私の課題は、難病の息子と高齢の犬2匹と猫2匹と共に、最期まで元気に生きることだ。今日息子についてくれている支援員さんに、「この頃歯が下がってくる気がする。歯医者に行ってこないと…。」と言うと、「昔の人は歯が全部無くても何でも食べていましたよ」と。そうか、そこまで腹をくくった上で、自分に出来ることをすればいいのか…。なんだか生きる心構えを教えてもらったような気がした。           


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